これでよかったのか

日曜日も仕事があったA子は、夕方に相手の家に行くことにした。事故から2日たったが、相手の様子を確認するのとお詫びと向かわなければならない場所だった。手土産は行く途中の店で買う予定をしていたが、立体駐車場が面倒臭くなって道沿いの店によって購入。ここら辺では有名な店舗だ。それを台にしてお見舞いも添える。夫にいくらいれよう、と聞くと片手の答えが返ってきたのでそうした。足らないのか十分なのかわからない。事故の大きさから言うと足りないくらいだと思うが幸いにもほとんど怪我がない様子なので多いのかもしれない。取り合えず、気を利かせてきちんと風呂敷に包んで、「ほんとうに改めておわびします」と車の中で練習しながら向かった。住所を入れるとナビが案内してくれる。ここら辺は通ったこともあるので「この家か・・・」、すぐにわかった。日曜日の5時。留守だった。家の夕食の支度もあるのでいったん帰り6時ごろまた向かう。それでも留守で近くに車を止めて待つことにした。どういう反応されるだろう。あれだけに事故を起こしたので「あんたもたいへんやったな」と言われるか。もし、打ち身とかあって仕事に支障があるようならちょっとむっとされるだろうか。憂鬱な気分で車にいるとトラックが入ってきた。ご主人のような方が下りてきて荷物を一つ一つ片付ける。10分~15分ほどかけておられただろうか。そのあと自宅に入られた。一呼吸おいて「よし、行こう」とA子は車を降りて向かった。ピンポ~ン。返事があって先ほどのご主人が出てきた。A子は「この度はほんとにすみません」と第一声を上げた。ご主人はちょっと解せない様子。きっと自宅ではA子の家のように事故の話で大騒ぎになっているだろうと思っていたので、「ああ」という反応を予測していたが全く「誰かな??」という反応にちょっと戸惑う。「〇〇の××です」とA子は名乗ったがご主人はまだ?という表情。「あの、事故の・・・」と言葉をつなぐとやっとご主人は「ああ、」という表情に変わりそしてさわやかな笑顔で応答してくれた。A子はその様子にホッとして相手の体の様子を確認した。相手はその方の息子さんだった。「相手のことは何もいいよおらんかった」「ちょっと肩が痛いって湿布はっとたかな」 気さくにお話しされた。被害者であるから、相手はどこのだれか確認したいようなものだけれど、そんなこと気にも留めずに「あんたの方も大きな怪我みたいやな」とこちらの心配をしてくれた。「いやいや、こっちは自分でしたことで・・・」とA子は恐縮し「すみません、これ」と用意してきたものを渡すと、相手はそんなんええと受けてられない。「こうやってきてくれただけで十分」と話される。A子は自分ならとりあえずそれを受け取るのは当然と思っていたので、それを断られる相手に戸惑って、また、さらにそのご主人があまりに諭すような優しさを持っておられて、お金包んでそれで解決を図ろうとしている自分のように思えて恥ずかしさがこみあげてきた。恥ずかしい、と思った瞬間、A子は手を下げていた。「そうですか・・」「ほんとにすみません」。A子はそう言って持ってきたものを下げ帰ることにした。金額もその気持ちに左右した。もう少し少なかったら言うほどの額と違うし押し付けてでも受け取ってもらったかもしれない。金額というのは難しい。渡せばいいというものではない。かえって失礼になることもある。ご主人の人格に触れ、このお金、失礼になるんと違うかな、と感じてしまいひいてしまった。しかし、家に帰ってからほんとによかったのか後悔した。あれだけのことをして「すみません」と頭下げるだけでいいのか。あかんやろ。A子は自問自答して無理やりでも置いて帰るべきだったかと早くに下がってしまったことを後悔した。どうすればよかったか。相手は玄関から出て戸を閉めておられたので下段に置くわけにもいかない。相手が受け取らないと地べたに置くしかない・・。紙袋に入れておいたらよかったと後悔した。これでよかったのだろうか。

ただただ、ご主人はとてもいい方だった。素敵な方に出会えたという感動を感じた出会いだった。